中国法を専門とする弁護士でありながら、心ならずも中国に行くことができなくなり早3年半以上の月日が流れていきました。このたび、ようやく中国行きのビザを取得できたので、7月4日から19日までの日程で、北京→成都→上海(→香港)と中国出張をしてきました。
この隔絶された3年半の月日は、まさに「年年歳歳花相似/歳歳年年人不同(年年歳歳花相似たり/歳歳年年人同じからず)」というある唐詩のフレーズを思い出さずにはいられないものでしたが、肌感覚として感じたことを備忘録代わりに書いていきたいと思います。
1. 人がおとなしくなった?
まず私が感じたのは、「中国人がおとなしくなった」ということです。うまくは言えないのですが、以前常に思っていたような「騒々しさ」や「ぐいぐい来る感じ」が少なくとも表面上は感じられなくなり、中国入国に際してその圧に抗うべく「闘争モード」になっていた私としては、肩透かしを食らったような気分でした。それは、私の経験上一番ギラギラしていた上海でも同様でした。
これは様々な要因があるのでしょう。1つには、大都会(今回訪問したのは、いずれも中国有数の大都会です。)の中国人が洗練されてきたということもあるし、そこには少なからぬ外国の影響もあるのだと思います(個人的には、日本の影響は決して少なくないと思います。)。また、もう1つには、様々な国内事情がそうさせていることもあるのではないでしょうか。ともあれ、「内向きにまとまっている」印象を強く受けました。
2. 「ネットワーク強国」
中国を離れ、インターネットに自由にアクセスできる時間が長くなれば長くなるほど、中国でのインターネットの状況は、使いにくい、の一言に尽きます。
確かに、百度(バイドゥ)での検索や中国のその他の国内サイトへのスピードは極めて速く、その技術力には目を見張るものがあります。しかしながら、その一方で、国外サイトへのアクセスは、やっぱりかなり厳しいと言わざるを得ません。また、例えば同じApple IDでも、中国の携帯番号と紐づけたものを使って中国のApple Storeを利用しようとする場合には、一定のアプリのダウンロードができないという状況も生じます(例えば、LINEはダメなようです。)。
ところで先日、習近平国家主席は、中国をネットワーク強国(網絡強国)にするための新たな使命・任務を提示した旨の報道がありました。ただ、それは、「情報の自由な流通」とは一線を画しているようであり、むしろ「国家安全」を基軸とした「秩序ある発展」を志向しているように思われます。実際、そこで示された「10の堅持すべき重要原則」の中には、「共産党によるインターネットの管理の堅持」、「中国の特色のあるネット管理(注:実際には「治める」という用語を使用しています。)の道に進むことの堅持」、「国のネットワーク安全障壁の建設・堅牢化の堅持」といったものが存在することが注目されます。
なお、習近平主席は、以前からネットワークについて、「陸・海・空・宇宙」に続く「第5の空間」と位置付けて、そこに主権の存在を概念する「ネットワーク主権」(網絡主権)を提唱していたことを考えれば、上記の「秩序ある発展」は、「ネットワーク主権」が及びうるところすべてに適用されうるということになるはずです。これに対して、日本その他の西側国家は、どこまで認識しているだろうか、と考えずにはいられません。(続く)
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