top of page

「私的」ポストコロナの中国見聞記(その2)

前回投稿に引き続き、7月4日から19日までの中国出張で肌感覚として感じたことを備忘録代わりに書いていきます。なお、ここで述べることは、あくまでも個人的な経験に基づくものであって、客観的な検証を経ていない主観的な内容も多く含んでいますので、この点なにとぞご了解ください。


3. 外国人には使いにくい国内仕様のネットインフラ


前回投稿でも述べたように、ネットインフラの発展やそれに関連するデジタル化には目を見張るものがあり、例えば、居住している不動産に関する情報の閲覧なども居住地の政府のデジタルポータルサイトから可能となるなど、住民に対する行政サービスもかなりの部分スマホで完結することができるようになっているようです。


ただ、このようなインフラは、あくまでも「中国公民」に便利なように設計されており、外国人、特に一時的に入国する外国人にとってはなかなか簡単には使えないのも事実です。

このようなネットインフラ関連の典型としては、ペイメントシステム(WeChat Pay(微信支付)やAlipay(支付宝))が挙げられるところ、最近Alipayでは外国のクレジットカードとの紐づけもできるようになったと聞きますが、原則は中国の銀行口座との紐づけが必要です。その上、外国人の身分証明はもっぱらパスポートで行われるので、過去に既に登録できていたとしても、パスポートが変わった場合にはかなり面倒な手続を経ることとなります(この点も最近改善がみられているようですが、私の場合には、登録後何度かパスポートが変わったこともあり、相当な手間を強いられました。)。


また、これらのペイメントシステムは、多くのその他のアプリとも紐づけがなされているので、これらが使えないと他のアプリを使った支払にも使えず、(もはや財布を持ち歩かずに生活できてしまう)中国滞在の利便性が大きく損なわれることになってしまいます。


4. 退林還耕(林をやめて、耕地に戻そう)


近時、中国政府は、食糧自給率を上げるという観点から、森林を耕地化するというキャンペーンを展開しています。日本でも、これに関する報道がなされていることがあるので、標題のスローガンを聞いたことがある方もおられるのではないでしょうか。なお、これは、過去に存在した「退耕還林」という政策の逆バージョンという意味合いも有します。


さて、成都に滞在した折、市内の比較的中心部にある山(というか丘陵地)の近くを通ったのですが、辺り一面の木が伐採され、緑のシートのようなものがかぶされていました。同行の人に聞いたところ、これはどうも「退林還耕」の一環でそうなったもののようであり、地方からやってきたそれまでの建設労働者(農民工)が農作業をするんじゃないか、ということを言っていました。


また、更に聞くところでは、重慶市の辺り(重慶は、基本的に山がちな地形であり、可住面積が決して広くありません。)では、従来の耕地が既に住宅地として開発されてしまったため、さらに標高が上の山林で「退林還耕」をやっているらしいとのこと。仮にこれが真実であるならば、土砂崩れなどの自然災害をもたらさないよう「科学的」な検証の下それが実施されていることを祈ってやみません。


5. 国内経済―コロナによる個人事業主への痛みなど


中国駐在の多くの日本人が異口同音に言っていたのが、個人事業、特に飲食業に対するコロナのダメージの大きさであり、これがまだ尾を引いているとのことでした。これは、外食に頼りがちな駐在員にはかなりビビッドに感じられる事項なのでしょう。また、中国でも日本と同様、百貨店スタイルでの売り上げは落ち込んでいるようであり、それまで1フロアだったショッピングモールのレストランフロアが複数のフロアに及ぶ状況が出てきているようです(もちろん、そのようなところに出店できるのは、それなりの規模の飲食店であって個人商店ではありません。)。実際、私が上海で訪れたショッピングモールも、同じような感じでした。


また、確かに中国の国内旅行の需要は増加傾向にあり、今回訪問した都市(いずれも中国有数の人気旅行先です。)では多くの観光客を見ることができました。ただ、話によれば、確かに旅行のために必要不可欠な交通、宿泊、食事には一定の費用をかけるものの、土産物などの物販の消費はあまり上がっていないとのことです。

不動産セクターについては、これらの大都市での状況について自分で納得できる形での見聞を得られませんでしたが、成都の中心に近い地域で、工事をやっているのかストップしているのかが分からないショッピングモールのような建物があったことは事実です。また、上海ではオフィス供給過剰により賃料が下落し出したとも聞きました。

そして、私自身としては、ライドシェアの従事者が以前に比べてはるかに多くなったのではと思っています。確かに、失業時の方策として、ライドシェアの運転手というのはありうる選択なのだと思います。


なお、関連して一言。サービスという点でみれば、中国におけるサービスは、ものすごく良くなっています。今回の滞在で、これまでなら「知らない」、「どうしようもない」、「自分には関係ない」などとそっけなく言われてしまっていたことについて、かなり親身になって対応してくれた経験が少なからずありました。今回は(地下鉄ではない)鉄道に乗っていないのでわかりませんが、もし駅の切符売りのサービスが良くなっているのであれば、私にとってはもう中国が中国でないかのように思ってしまうことでしょう。(続く)

最新記事

すべて表示

過去2回の投稿に引き続き、7月4日から19日までの中国出張で肌感覚として感じたことを備忘録代わりに書いていきます。なお、ここで述べることは、あくまでも個人的な経験に基づくものであって、客観的な検証を経ていない主観的な内容も多く含んでいますので、この点なにとぞご了解ください。 6. 街の雰囲気 私自身が中国とかかわるようになって20年以上経っているせいもあるのですが、少なくとも今回訪問した各都市の

中国法を専門とする弁護士でありながら、心ならずも中国に行くことができなくなり早3年半以上の月日が流れていきました。このたび、ようやく中国行きのビザを取得できたので、7月4日から19日までの日程で、北京→成都→上海(→香港)と中国出張をしてきました。 この隔絶された3年半の月日は、まさに「年年歳歳花相似/歳歳年年人不同(年年歳歳花相似たり/歳歳年年人同じからず)」というある唐詩のフレーズを思い出さず

先般ご紹介したタイの民商法典(以下「法」といいます。)の改正法は、予定どおり本年2月7日に施行されました。しかしながら、まだ施行されて日が浅いこともあり、現地での実務運用がまだ確立されていないと言っても過言でない状況です。 そのような中、株式会社(非公開会社としての株式会社をいいます。以下同じ。)の株主総会の招集通知に関して商務省事業発展局(DBD)が2023年1月付でガイドラインを発表していたの

bottom of page