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​海外贈収賄防止

​弁護士法人GIT法律事務所

Q1 FCPAとは何ですか?

FCPAとは、米国海外腐敗行為防止法(Foreign Corrupt Practices Act)のことです。これは、外国公務員に対する贈賄を禁止・処罰する米国の連邦法で、後に説明する英国のBribery Act 2010(UKBA)、日本の不正競争防止法などと同様に、海外で贈収賄を行うと、現地刑法とは別に適用される域外適用法です。

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FCPAは、1970年代初め、米国においてウォーターゲート事件が発生し、田中角栄元首相等が有罪判決を受けたロッキード事件を含め、米国企業が国際取引において賄賂に手を染めている実態が発覚し社会問題化したことを契機に、1977年に制定されました。

その後FCPAはほとんど執行されていませんでしたが、2004年頃になって積極的に執行されるようになりました。これにより、贈賄防止の国際的機運が一気に高まったと言われています。それまでは、海外での賄賂は「郷に入りては郷に従え」と考える人も多かったのです。

なぜ急にFCPAの執行が強化されたのかについては、諸説ありますが、(1)9.11を契機としたテロとの戦いにおいて、賄賂が独裁政権の重要な財源になっていることに着目されて執行が強化されたこと、(2)規制当局であるDOJ(米国司法省)が企業との起訴猶予合意(DPA)を締結する執行手法を確立したことなどが要因と言われています。

Q2 FCPAの執行傾向は?

FCPAの執行は、年々厳しさを増していると言われます。以下が直近(2021年3月現在)の執行Top 10です。この通り、ここ数年で1000億円を超えるペナルティが科せられる件が増えてきました。

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Q3 FCPAは日本企業に執行されることもあるのですか?

 

はい。日本企業が海外で賄賂を払うと、FCPAが適用されるリスクがあります。FCPAは適用範囲が非常に広く、メーカー、商社、エンジニアリング企業など合計7社の日本企業に対して執行されたことがあります(2021年3月現在)。最高額は日系メーカーに対する2018年の2億8000万米ドルのペナルティです。

適用範囲は以下の4種類です。

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  1. Issuerは米国の上場企業という意味ですが、日本企業の中でも、米国の証券取引所に上場していたり、米国で資金調達をして米国で継続開示している企業がこれに該当します。ADR (American Depositary Receiptの略称。米国預託証券) を通じて株式が米国でOTC(店頭登録)されている日本企業も多数ありますが、そのようなIssuerには該当しません。
     

  2. Domestic Concernについては、日本企業の米国法人が米国外で贈収賄に関与した場合(例えば南米の公務員に賄賂を渡した場合)が問題になることが多いと言えます。
     

  3. Foreign Person Acting within the USは、米国で行為の一部をした場合でも適用されます。一般的には米国の関係者にメールを送ったり、米ドルで賄賂資金を送金するケースもこの適用範囲に該当します。
     

  4. 米国企業との合弁企業が賄賂を支払った場合に適用される場合が典型例です。

Q4 FCPAは、賄賂禁止条項と会計・内部統制条項の2種類の条項で構成されているということですが、どういう意味ですか?

 

賄賂禁止条項とは、外国公務員に対して、賄賂の支払、その申し込み、約束、それらの承認を行ってはならないという条項です。

会計・内部統制条項とは、正確かつ適正な会計帳簿を作成して内部統制を確立することを求める条項です。これは、企業が賄賂を支払ったとしてもそれを「賄賂」として計上することはほぼあり得ず、通常、会計不正を伴うことに着目したものです。

この会計・内部統制条項は、賄賂を払ったことが立証されなくても会計・内部統制に問題があれば適用されますので、リスクが高い法律です。典型的には、取引を取得したり許認可を通すためにコンサルタントに報酬を払ったが、そのコンサルタントを十分に管理していなかったケースがこれに該当します。

Q5 UKBAとは何ですか?

UKBAとは、Bribery Act 2010、すなわち、贈収賄を禁止・処罰するイギリス法です。2010年4月8日に成立し、2011年7月1日より施行された比較的新しい法律です。

UKBAの特色は、以下の2つです。

 

  1. Facilitation Payment(円滑化のための少額賄賂)の免除規定がない。
    米国FCPAにおいては、機械的な公務について少額の賄賂を支払った場合、処罰しないことが明記されています。他方、UKBAにはそのような例外規定はありません。

     

  2. 公務員だけではなく民間人への贈賄も処罰対象となっている。
    日本でも贈収賄罪が適用されるのは公務員との関係が中心ですが、UKBAは民間人との関係での贈賄も処罰対象となります。例えば、S&P(米国の格付会社であるスタンダード・アンド・プアーズ (Standard & Poor's)の略称) のレーティングを改善してもらうためにS&Pの担当者に企業が賄賂を支払う場合などが想定されます。

Q6 UKBAの適用範囲は?

 

UKBAの適用範囲は様々ですが、その内、日本企業として注意しておきたいのは「英国内において事業を行う企業」というカテゴリーです。その企業の本拠地や不正行為が行われた場所を問わず、「英国内において事業を行う企業」が賄賂の支払を防止できなければ、UKBAが適用されるという仕組みが導入されています。

したがって、英国内で事業を行う日本企業を含む国際企業にとって、UKBAはかなりの脅威と言うことができます。

Q7 日本にも外国公務員への贈賄を処罰する法律がありますか?

 

はい。不正競争防止法第18条の外国公務員贈賄罪により処罰されます。1997年、日本も加盟国となっている経済協力開発機構(OECD)の外国公務員贈賄防止条約を採択したことに伴い、1998年の不正競争防止法の改正によって追加され、1999年2月より施行されています。

 

その適用範囲には、(1)日本国民が海外で外国公務員等に贈賄を行った場合(属人主義)、及び(2)日本で行為の全部又は一部を行った場合(属地主義)があります。

たとえば、海外拠点で現地従業員が現地公務員に賄賂を払ったケースで、それを日本人駐在員が承認していれば属人主義が適用されます。また、日本本社がそれを承認していれば属地主義も適用されます。

Q8 不正競争防止法第18条の執行傾向は?

 

現在まで執行された主な件は、九電工、PCI、フタバ、日本交通技術、三菱日立パワーシステムズ、タイセイに限られており、日本捜査当局は必ずしも積極的に執行しているとは言えません。日本の捜査当局の海外での捜査能力が限られていることがその原因と考えられます。

しかし、2020年には天馬の件につき第三者委員会報告書が発表されるなどhttps://www.tenmacorp.co.jp/dl/?no=1558、関心が高まっている分野であることは間違いありません。FCPAと異なり、執行されると連日のように日本メディアに大きく報道されますので信用毀損リスクが高いと言えます。

Q9 贈収賄防止のためにコンプライアンスが重要であるのは何故ですか?

 

贈賄防止のコンプライアンス制度により、贈賄を抑止するというだけではなく、各国の法律上、その制度が存在することにより刑の減免を受けることができる場合があります。

  1. FCPA
    米国連邦量刑ガイドラインによりコンプライアンス制度の存在が考慮されることが明記されており、執行されるか否かもコンプライアンス制度の存在・内容により左右されます。また、米国DOJがコンプライアンス制度の評価に関するガイドラインを発表していますので、参考にしてください。
    ECCP Translation | giandt (giandt-law.com)

     

  2. UKBA
    UKBAにおいても、法令上、有効なコンプライアンス制度の存在が処罰を免除するものとして明記されています。すなわち、企業が「Adequate Procedure」(適切な手続、すなわち、コンプライアンス制度)を持っていれば、たとえ贈賄事件が発生しても、企業責任を免れることが法定されています。さらに、英国法務省(Ministry of Justice)も、ガイドラインを2011年3月に発表し、その具体的内容を解説しています。
    The Bribery Act 2010 - Guidance (justice.gov.uk)

     

  3. 不正競争防止法第18条
    ​経済産業省が外国公務員贈賄防止指針を発表しており、その第2章「企業における外国公務員贈賄防止体制について」において、コンプライアンス体制の構築に関する具体的記載があります。そこで、コンプライアンス体制の構築が、取締役の善管注意義務の履行のために必要であることが明示されています。さらに、所謂「法人の過失推定説」に基づき、実効的なコンプライアンス体制があれば、法人に過失がなかったことになるので、罪を免れる可能性があることに言及されています。
    外国公務員贈賄防止指針について(METI/経済産業省)

Q10 贈収賄防止のためにコンプライアンスはどのように構築したらよいですか?

贈賄防止のコンプライアンスは、主に以下の要素に分類されます。​

  1. 経営トップによるコミットメントと行動

  2. リスクベース・アプローチの採用

  3. 基本方針及び社内規程の策定

  4. 組織体制の整備

  5. 第三者の管理

  6. 教育

  7. モニタリングと継続的改善

 

その具体的な内容については、日本弁護士連合会が発行している「海外贈賄防止ガイダンス(手引)」が参考になります。日本弁護士連合会:海外贈賄防止ガイダンス(手引) (nichibenren.or.jp)

日本企業においても、贈賄防止規程を整備している企業が多くなってきましたが、実効的なコンプライアンス制度を導入している企業は少数派であり、道半ばと言えます。贈賄防止制度の具体的な導入については、お気軽にGIT法律事務所までお問い合わせください。

Q11 東南アジアや中国の現実を見ると、「贈賄防止」は本社の「きれいごと」にすぎないのではないですか?実際に賄賂を要求されたら、どのように対応したらよいのですか?

贈賄防止のコンプライアンスは決して形だけのものではありません。それは現実に現地でビジネスを行っておられる方々にとってソリューションを提供するものでなくてはなりません。

GIT法律事務所では、汚職が横行する現地において、どのようにすれば賄賂を支払わずにビジネスと両立させていくかに踏み込んだサービスを行っております。お気軽にお問い合わせください。

Q12 ベトナムでの贈収賄の法規制はどうなっていますか?

トナムの贈収賄規制法令で代表的なものは、刑法及び汚職防止法であり、刑事罰は刑法に規定され(なお、ベトナムでは、贈収賄の領域のみならず、刑事罰はすべて刑法に規定されています)、未遂罪も処罰の対象となっています。

2015年の刑法改正により、(1) 贈収賄罪の適用対象は公務員だけではなく民間人にも広がるなど、いわゆる商業賄賂も規制されるようになり、また、(2) 典型的な賄賂である金銭の授受などの「物質的利益」だけではなく、「非物質的利益」も処罰の対象となりました。

「物質的利益」の処罰対象額は、原則、200万ベトナムドン(VND、約1万2000円)以上であり、利益の額によって法定刑が異なります(次表参照)。

なお、「非物質的利益」が何を指すかについては刑法に明文の規定がありませんが、その例については最高人民裁判所が発出した議決( 03/2020/NQ-HĐTP)に記載されており、昇進や学校卒業の約束、性的サービスなどが挙げられています。

また、ベトナム刑法には、賄賂を強要された場合、発覚前に自発的に供述した場合は免責される旨の規定もあることから、そのような場合は捜査当局に積極的に協力するなどのリスクヘッジ手段も検討すべきです。

Q13 タイでの贈収賄の法規制はどうなっていますか?

タイにおける贈収賄等の汚職を規制する法律としては、刑法のほか、汚職防止法、国家機関に対する入札違反に関する法律等があります。

刑罰の中心は刑法です。日本と同様、公務員が職務に関連して財産その他の利益を不当に収受し、又はその要求・約束をしたときは収賄として処罰されます。また、贈賄については、公務員に対し、職務上不正な行為をさせ若しくは相当の行為をさせず、又は職務を遅延させることを目的として、財産その他の利益を供与し、又はその申込・約束をした場合に贈賄罪として処罰され、5年以下の懲役若しくは10万バーツ(約40万円)以下の罰金が科されます(なお、民間人どうしのいわゆる商業賄賂は現時点で規制対象になっていません)。

また、汚職防止法にも刑事罰が規定されています。特に注目すべきは、近時の同法の改正により、ある者が外国法人の利益のために贈収賄等の汚職犯罪を行った場合、その外国法人が刑事罰の対象となり、罰金刑に処せられることになったという点です。当然、日本企業のタイ現地法人にも適用があります。罰金額は、最大で、汚職により得られた利益又は発生した損害の2倍の額となります。

この点、同法は、併せて、汚職犯罪の発生を防止するための適切な内部統制態勢を整備することを条件にこの罰金刑が減免されうる旨規定しています。内部統制態勢が整っているといえるための基準として、タイ国家汚職防止委員会(NACC)がガイドラインで以下のような8つの基本原則を公表しており、タイに進出する企業においては、このガイドラインを参考にして、贈賄防止に向けた社内のコンプライアンス体制を整備しておく必要性が大きいです。

  1. 贈賄防止のための強固で明確なポリシーづくりと、そのポリシーが経営トップにより支えられていること

  2. 贈賄発覚時のリスクを効率的に特定・評価する仕組みの整備

  3. 高リスク・脆弱な領域(贈賄とみなされるリスクが高い贈答、寄付、親切心からの支出等)に対する措置を詳細に定め、改善すること 

  4. 取引関係者にも贈賄防止措置を適用すること

  5. 帳簿と会計関係書類への正確な記録

  6. 贈賄防止措置と整合する人事管理指針の整備

  7. 贈賄の疑いが発生した際にすぐ報告できるようなコミュニケーション態勢の整備

  8. 贈賄防止措置及びその効果について、定期的な見直し及び結果評価をすること

 

お、タイでは、公務員への慣習的な贈り物がなされている場合がありますが、これについては、NACCが告示を発出し、3,000バーツ(約12,000円)を超える贈り物の受領については、上司への報告等が必要とされています。もっとも、刑法における贈賄罪には金額の下限がないことから、3,000バーツ以下であればすべて許容されるとは限らず、例えば、贈り物を行うとしても、関係ある公務が行われた時期に近接した時期の贈答を避けるなど、その贈答に不正な目的のないことが外部から明らかにできるような配慮をするべきです

Q14 中国での贈収賄の法規制はどうなっていますか?

  1. 対公務員(中国語:国家工作人员)関係の法規制

まず、対公務員個人との関係ですが、中国でも、他国と同様、公務員が自己の職権を濫用し、金銭を受け取ったり、また、金銭を受け取って他人に便宜を図ったりすることは、収賄罪として刑法で処罰されます。

贈賄側についても、不正な利益を図る目的で公務員個人に財物を供与した者、不正な利益を図る目的がなくとも、経済活動において国家の規定に違反し、公務員に比較的多額の財物を供与した、又は公務員にリベート(中国語:回扣huíkòu)や手数料を供与した者はいずれも贈賄罪として処罰されます。

 

また、贈賄の相手としては、公務員個人のみならず、親族等公務員と密接な関係にある者や国家機関や国有企業という「組織体」もその対象となっています。また、個人からではなく、法人、企業等の「組織体」から上記のような財物を供与された場合も、同じく刑法で処罰されます。

行為者には懲役刑に加え、刑事罰としての罰金(中国語:罚金fájīn)も併科されるところ、罰金額は人民法院(裁判所)の裁量によることから、予想以上の重い財産的制裁が科されるリスクがあります。

なお、贈賄罪の処罰基準や「情状が重い場合」についての目安など、法律の明文に規定されていない事項について、最高人民法院等が発出している「司法解釈」というガイドラインで規定されている場合があります。

刑法と司法解釈による贈賄規制等についてまとめると以下のとおりになります。

【公務員関係の主な刑法上の贈賄規制】

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 2. 商業賄賂に関する法規制

中国では、対公務員のみならず、私人間でやりとりされる、いわゆる商業賄賂についても刑法での処罰の対象となっており、不正な利益を図るために、会社、企業等

職員に財物を供与した者は、刑法で贈賄罪として処罰されます。

【公務員関係の主な刑法上の贈賄規制】

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また、商業賄賂は、刑法による刑事罰が科されない場合でも、「反不正当競争法」等の行政法規により、中国の行政当局から行政罰としての罰金(中国語:罚款fákuǎn)が科されることがあります。例えば、反不正当競争法では、取引の機会を得たり、競争で優位な立場に立ったりするなどの目的で賄賂を供与することを禁じており、その適用範囲となる対象者も、取引の相手方だけでなく、取引の相手方から事務の委託を受けた者や、職権や影響力を利用して取引に影響を与える者となるなど、刑法より範囲が広いです。違反した場合、行政当局によって、10万元(約200万円)から200万元(約4000万円)の行政罰としての罰金が科されたり、罰金に加えて「違法所得の没収」という一種の追徴の処分がなされたりしており、特に、違法所得の没収は、罰金額を大幅に上回る傾向があるなど、企業にとって予想外に巨額の財産的損失を招くリスクが高いものであって、日本企業への執行例も聞くところです。さらに、情状によっては、その営業自体の取消処分もあるとされています。

 3.  進出企業の取り得る対応策等

このように、中国では、公務員に対する賄賂、商業賄賂ともに広く処罰の対象となっていることされるとされていることから、「先方からの賄賂の要求を断固として断る姿勢を明確にする」というごく一般的な対応策はもちろんとして、取引行為や贈答等の通常の企業活動による財物移転が中国当局に賄賂と認定されないための方策も必要となります。

まず、賄賂ではなく、社会儀礼上の範囲内で公務員に贈答品を送るとした場合の量的な注意点です。関連法令(対外公務活動中の贈答の受贈に関する中国政府の規定)によれば、公務員が200元(約4000円弱)以上の贈答品を受け取った場合は、関連部署等に対し受領の報告とともに、受領した贈答品を提出するものとされていることから、仮に贈答品を送るとしても、その金額については、200元未満に押さえるなどの工夫をすべきです。

次に、贈答品の贈り方に関する注意点です。最高人民法院及び最高人民検察院が以前に発出した「商業賄賂刑事事件の取扱いにおける法律の適用に関する諸問題に関する意見」には、(1) 財物移転が発生した背景、程度、(2) 財物の価値、(3) 財物移転の原因・時期・方法、受領側への請託の有無、(4) 受領側が職務上の便宜を図るか否かなどの観点から商業賄賂とそうでないものを区別するよう記載されているところ、対象の贈答品等が高価なものでなくても、財物移転行為そのものから不正利益を図るなどの目的を推認されて賄賂と認定されないよう、財物移転が、当該職務や取引と近接した時期にならないようにするなどの工夫が必要です。   

 

さらに、取引活動を賄賂とみなされないため、事前の内部統制態勢を整備することも重要です。前記反不当競争法は、取引相手へのリベートや手数料の支払いは明示的に禁止する一方で、取引相手への値引きや仲介人への手数料支払いは禁止していません。もっとも、それらの値引きや手数料支払いは「明示の方法により」、「事実どおりに記帳する」必要がある旨同法が規定していることからすれば、中国の法制度の下では、(リベートに代表されるような)「明確に詳細を記録に残せない」取引は賄賂と認定される、というリスクをはらんでいると考えられます。したがって、取引の内容を自社で正確に記録するとともに、取引の相手方にも正確な記録を求めることが大事です。場合によっては、取引先との基本契約時に、当事者間において、「互いに当該取引を会計上正確に記録し、処理する」旨の条項を入れ込んでおくなどの対策が有用かもしれません。

最後に、アフターフォローについてです。刑法には、公務員関係の賄賂及び商業賄賂のいずれの場合においても、訴追前に贈賄行為を捜査機関に自白すれば刑が減免される可能性がある旨規定されていることから、残念ながら、贈賄として事件化される段階に至ってしまうような場合、会社として当局への捜査協力を積極的に行うなどのリスクヘッジ手段も検討すべきです。

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#News 企業不正・不祥事の予防・発見・対応に関する評価基準を作成いたしました

#News HHS OIGによるSpecial Fraud Alert (特別詐欺警告)の日本語訳を作成いたしました

#News 公務員等に対する贈答・接待禁止に関する対応チェックリストを作成いたしました

#News Business Law Journal 2020.12月号にて、西垣による解説『FCPAリソースガイド第二版の概要と日本企業への影響』が掲載されました

#News 西垣建剛の海外贈賄防止委員会の活動がFCPA Blogに掲載されました

#Newsletter 米国司法省の『企業コンプライアンス制度の評価(Evaluation of Corporate Compliance Programs)』​の日本語訳を作成いたしました

#Seminar ​【2021年6月4日(金)14:00~15:25】贈収賄防止のコンプライアンス - 経済産業省の外国公務員贈賄防止指針の改訂と日本企業に求められる対応 - (日本経済新聞社主催オンラインセミナー)

#Seminar ​【2021年4月13日(火)13:00~14:30開催】トムソン・ロイター&ウェストロー・ジャパンによる贈賄防止コンプライアンスに関する共催セミナーに西垣弁護士がパネリストとして登壇します

#Seminar 2020年7月6日(月)12:00 - 13:00 : トムソンロイター主催の贈収賄対策ウェビナーに西垣弁護士が登壇いたしました

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