
Q & A
- International Arbitration -
Contents
Q1 | 国際仲裁とは、どのような紛争解決手続ですか?
国際仲裁とは、国境を越える取引などから生じた紛争を、裁判所ではなく、当事者の合意に基づいて選任された仲裁人の判断によって解決する手続です。
仲裁人が最終的に示す判断を「仲裁判断」といいます。仲裁判断は原則として最終的なものであり、当事者を拘束します。裁判と比べて、仲裁人、仲裁地、使用言語、手続の進め方などに、当事者の意向を反映させやすいことが大きな特徴です。
Q2 | 外国での裁判ではなく、国際仲裁を選ぶメリットと注意点は何ですか?
国際仲裁の主なメリットは、中立性、専門性、非公開性、国際的な執行のしやすさなどにあります。
相手方の本国の裁判所ではなく、中立的な国や地域を仲裁地として選ぶことができます。また、対象となる取引、業界又は法律分野に詳しい専門家を仲裁人として選ぶことも可能です。
仲裁判断については、ニューヨーク条約(外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約)に基づき、多数の締約国で承認・執行を求めることができます。他方で、外国裁判所の判決を他国で執行できるかどうかは、各国の法律や条約の有無に左右されます。そのため、相手方の資産が海外にある場合には、回収可能性の観点から、仲裁判断の国際的な執行可能性が大きな利点となります。
注意点としては、仲裁では、仲裁人の報酬や仲裁機関の管理費用が必要です。また、裁判の控訴のように、事実認定や法律判断を全面的にやり直す手続は、原則としてありません。
したがって、仲裁が常に裁判より優れているわけではなく、紛争の規模、費用、秘密性、相手方の所在地、資産の所在、取引関係を維持する必要性などを踏まえて選ぶことが重要です。
Q3 | どのような紛争が国際仲裁に適していますか?
国際仲裁は、国際売買、販売代理店契約、ライセンス契約、M&A、合弁事業、建設・インフラ、エネルギー、金融、知的財産、技術取引など、幅広い国際取引上の紛争に利用されています。
特に、次のような場合には、国際仲裁が有力な選択肢となります。
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相手方の本国の裁判所で争うことを避けたい場合
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技術的又は専門的な争点がある場合
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営業秘密や技術情報を取り扱う場合
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相手方の資産が海外に所在する場合
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複数の国に関係する紛争を、可能な範囲で一つの手続で扱いたい場合
ただし、仲裁によって解決できる事項の範囲は、関係国の法律によって異なります。知的財産権の登録・有効性について第三者にも効力を及ぼす形で判断する必要がある場合や、倒産手続などの公的手続が関係する場合には、仲裁だけでは解決できないことがあります。
また、紛争金額が比較的小さい場合には、仲裁人報酬や翻訳費用などを考慮すると、訴訟、調停又は交渉の方が適していることもあります。当事務所では、争点や証拠の絞り込み、迅速手続の活用などにより、費用対効果を重視したCost Effective Arbitrationを提案しています。
Q4 | 契約書に仲裁条項がない場合でも、国際仲裁を利用できますか?
契約書に仲裁条項がない場合でも、国際仲裁を利用できる場合はありますが、相手方との新たな合意が必要です。
国際仲裁を行うためには、当事者双方が、その紛争を仲裁によって解決することに合意していなければなりません。この合意を「仲裁合意」といいます。
契約締結時に仲裁条項がなくても、紛争発生後に相手方と仲裁の利用について合意できれば、仲裁を行うことは可能です。
もっとも、既に対立が深まった後では、相手方が仲裁に同意しないことも少なくありません。そのため、海外企業との契約を締結する段階で、あらかじめ仲裁条項を設けておくことが重要です。
仲裁合意の成立や内容について後に争いが生じないよう、契約書、電子メールその他の記録により、対象となる紛争と仲裁の内容を明確にしておく必要があります。
Q5 | 国際契約の仲裁条項には、何を記載すべきですか?
仲裁条項では、少なくとも、どの紛争を、どのような仲裁で解決するかが明確になるように定めます。
機関仲裁を利用する場合には、一般に、次の事項を記載します。
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仲裁の対象となる紛争の範囲
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利用する仲裁機関と仲裁規則
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仲裁地
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仲裁人の人数
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仲裁手続の使用言語
必要に応じて、契約の準拠法、仲裁合意の準拠法、仲裁人に求める資格、秘密保持の内容、迅速手続や緊急仲裁人手続の適用の有無についても検討します。
また、基本契約、個別契約、保証契約、株主間契約など、複数の契約が関係する取引では、それぞれの紛争解決条項を整合させることが重要です。契約ごとに仲裁機関、仲裁地又は使用言語が異なると、関連する紛争を一つの仲裁で扱うことが難しくなる場合があります。
仲裁の前に協議や調停を行う段階的な条項を設ける場合には、協議期間、仲裁を開始できる時点、通知方法なども明確にしておく必要があります。仲裁機関が公表しているモデル条項を出発点としながら、取引の内容や関連する契約に合わせて調整することが重要です。
Q6 | 仲裁機関、仲裁地、準拠法、使用言語は、どのように選べばよいですか?
1. 仲裁機関
仲裁機関は、仲裁人の選任、費用の管理、書面の送付など、仲裁手続を管理する機関です。代表的な仲裁機関には、次のようなものがあります。
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ICC国際仲裁裁判所
ICC International Court of Arbitration
国際商業会議所(International Chamber of Commerce〔ICC〕)の仲裁機関
仲裁裁判所事務局の本拠地:フランス・パリ
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シンガポール国際仲裁センター
Singapore International Arbitration Centre〔SIAC〕
主たる事務局所在地:シンガポール
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香港国際仲裁センター
Hong Kong International Arbitration Centre〔HKIAC〕
主たる事務局所在地:香港
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ロンドン国際仲裁裁判所
London Court of International Arbitration〔LCIA〕
主たる事務局所在地:英国・ロンドン
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一般社団法人日本商事仲裁協会
The Japan Commercial Arbitration Association〔JCAA〕
東京本部:東京都
ICCやLCIAは、名称に「裁判所」とありますが、国の裁判所ではなく、仲裁手続を管理する民間の仲裁機関です。
また、仲裁機関の所在地と仲裁地は別のものです。例えば、パリに事務局の中心を置くICCを利用しながら、東京又はシンガポールを仲裁地にすることができます。
仲裁機関を選ぶ際には、取扱実績、事務局の対応言語、仲裁規則、費用の計算方法、仲裁人の選任制度、迅速手続や緊急仲裁人手続の有無などを比較します。
2. 仲裁地
仲裁地とは、仲裁手続の法律上の本拠地です。
仲裁地の法律は、仲裁手続に対して裁判所がどのように関与できるか、仲裁判断の取消しをどこの裁判所に申し立てるか、仲裁廷による暫定保全措置をどのように扱うかなどに影響します。
仲裁地と、証人尋問などを実際に行う場所は同じである必要はありません。例えば、仲裁地をシンガポールとしながら、審理を東京又はオンラインで行うこともできます。
仲裁地は、交通の便だけでなく、仲裁法制、裁判所の仲裁に対する姿勢、中立性、法的安定性などを踏まえて選ぶ必要があります。
3. 準拠法
準拠法とは、契約上の権利や義務を判断するために適用する法律です。
契約の準拠法と仲裁地は、同じ国である必要はありません。例えば、契約の準拠法を日本法、仲裁地をシンガポールとすることもできます。
また、契約全体の準拠法とは別に、仲裁条項そのものにどの国の法律が適用されるかが問題となることがあります。契約の準拠法と仲裁地が異なる場合には、仲裁合意の準拠法も明記することを検討します。
4. 使用言語
使用言語は、申立書、主張書面、証拠、証人尋問などで用いる言語です。
国際仲裁では、英語が使用言語として選ばれることが少なくありません。
契約書や主要な証拠が日本語で作成されているにもかかわらず、仲裁言語を英語とした場合には、多くの翻訳が必要となり、費用や準備期間が増える可能性があります。
そのため、契約書の言語だけでなく、実際に証言する可能性のある担当者の言語、社内資料の言語、代理人や仲裁人の選択肢なども考慮します。
仲裁機関、仲裁地、準拠法及び使用言語は、形式的に決めるのではなく、中立性、費用、証拠、手続の利便性、将来の執行可能性を総合して選ぶことが重要です。
Q7 | 仲裁人は、どのように選ばれますか。また、1名と3名のどちらがよいですか?
仲裁人の選任方法は、仲裁条項と適用される仲裁規則によって決まります。
当事者が仲裁人を指名し、仲裁機関がその選任を確認する場合のほか、当事者が期限内に選任できない場合などに、仲裁機関が仲裁人を選任することがあります。
仲裁人を選ぶ際には、次のような点を検討します。
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対象となる業界や取引への理解
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関係する法律や実務慣行についての経験
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使用言語
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国際仲裁の経験
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手続を適切かつ迅速に進める能力
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独立性及び公平性
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事件に対応できる時間的余裕
仲裁人を1名とする場合には、一般に費用を抑えやすく、日程調整も容易です。紛争金額が比較的小さい場合や、争点が限定されている場合に適しています。
仲裁人を3名とする場合には、異なる専門性や法的背景を仲裁廷に取り入れやすくなります。紛争金額が大きい場合、事実関係や法律関係が複雑な場合、複数国の法律や実務が関係する場合に選ばれることがあります。
3名の場合には、各当事者が1名ずつ仲裁人を指名し、議長仲裁人は、指名された2名の仲裁人又は仲裁機関が選任する方式が一般的です。具体的な選任方法は、適用される仲裁規則によって異なります。
Q8 | 国際仲裁は、どのような流れで進みますか?
一般的な流れは、次のとおりです。
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仲裁の申立て
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相手方による答弁書の提出
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仲裁人の選任と仲裁廷の成立
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手続準備会における日程・手続の決定
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主張書面と証拠の提出
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必要に応じた文書提出手続
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証人や専門家の尋問を含む審理
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審理の終了
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仲裁判断
具体的な進め方は、仲裁規則、当事者の合意、仲裁廷の判断、事件の規模や複雑性によって異なります。
すべての事件で証人尋問が行われるわけではありません。争点が限定されている場合には、書面だけで判断されることもあります。また、手続準備会や審理をオンラインで実施することもあります。
手続の初期段階では、書面の提出回数、文書提出の範囲、証人尋問の方法、審理日程などが定められます。この段階で事件全体を見通した方針を立てることが、期間と費用を管理する上で重要です。
Q9 | 国際的な紛争が発生した場合、企業はまず何をすべきですか?
まず行うべきことは、対応期限の確認、証拠の保全、事実関係の把握、資産及び回収可能性の確認です。最初に契約書を確認し、仲裁条項、準拠法条項、相手方への通知期限、事前協議の義務、時効や除斥期間などを把握します。契約上の通知方法や送付先が指定されている場合には、その方法に従う必要があります。
次に、契約書、電子メール、社内チャット、契約交渉資料、議事録、会計資料などを保全し、関係部署に資料を削除しないよう指示します。関係者が異動又は退職する可能性がある場合には、記憶が薄れる前に事情を確認します。
相手方による資産処分、証拠の消去、契約解除、銀行保証に基づく請求などが予想される場合には、仲裁申立て前であっても、裁判所の仮差押え・仮処分や緊急仲裁人手続を検討します。
また、相手方との連絡窓口を整理し、不用意な発言や資料の送付を避けることも重要です。
最終的には、仲裁に勝つ可能性だけでなく、必要な費用と期間、相手方の信用状態、実際の回収可能性、取引関係への影響を踏まえ、交渉、調停、仲裁、訴訟その他の手段を比較し、最も適切な解決手段を検討します。
Q10 | 国際仲裁の解決までには、どのくらいの期間がかかりますか?
事件によって異なりますが、通常の国際仲裁では、仲裁申立てから最終判断まで1年以上かかることがあります。複雑な事件では、数年を要する場合もあります。
期間を左右する主な要素は、争点の数、証拠や証人の量、仲裁人の人数、文書提出の範囲、審理日数、当事者の対応状況などです。
一例として、JCAAが公表した統計では、2021年から2025年までに仲裁判断で終了した事件について、仲裁廷の成立から仲裁判断までの平均期間は10.5か月でした。ただし、これには仲裁申立てから仲裁廷が成立するまでの期間は含まれていません。
主要な仲裁機関には、仲裁人を1名としたり、書面の回数を制限したり、審理を省略したりする「迅速手続」が設けられています。適用条件や目標期間は、仲裁機関や仲裁規則によって異なります。
ICCの2026年仲裁規則には、全当事者の明示的な合意がある場合に利用でき、最初の手続準備会から3か月以内に最終的な仲裁判断を示すことを目標とする高度迅速仲裁手続(Highly Expedited Arbitration Provisions)も設けられています。
Q11 | 国際仲裁には、どのような費用がかかりますか?
主な費用は、次のとおりです。
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仲裁機関の管理費用
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仲裁人の報酬及び経費
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代理人弁護士の費用
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専門家の費用
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翻訳・通訳費用
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文書や電子データの収集・管理費用
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審理会場又はオンラインシステムの費用
仲裁人の報酬は、紛争金額を基準として算定する方式と、仲裁人が業務を行った時間を基準として算定する方式があります。計算方法は、仲裁機関や仲裁規則によって異なります。
総費用は、仲裁人の人数だけでなく、主張書面の回数、文書提出の範囲、証人や専門家の人数、翻訳する資料の量などによって大きく変わります。
仲裁廷は、事件の結果、当事者の手続上の対応、支出した費用が合理的であったかなどを考慮して、最終的な費用の負担割合を決定することがあります。ただし、勝訴した当事者の費用が必ず全額回収できるとは限りません。
請求金額だけでなく、相手方の資産状況や回収可能性も確認し、費用対効果を検討することが重要です。
Q12 | 国際仲裁では、相手方に文書を提出させることができますか?
一定の場合には、相手方が保有する文書の提出を求めることができます。
国際仲裁では、まず各当事者が、自らの主張を裏付ける証拠を提出します。その上で、必要に応じて、相手方が保有する特定の文書又は範囲を限定した文書群の提出を求めます。
もっとも、米国訴訟のような広範な証拠開示が当然に行われるわけではありません。
一般には、提出を求める文書について、争点との関連性、判断における重要性、相手方が保有していると考える理由などを説明する必要があります。仲裁廷は、文書の必要性、提出の負担、秘密情報、弁護士との法的相談に関する秘密(いわゆる秘匿特権)などを考慮して、提出の要否を判断します。どの範囲の秘匿特権が認められるかは、関係する法律や仲裁廷の判断によっても異なります。
紛争が予想された後に関係資料を廃棄又は削除すると、仲裁廷による証拠評価に影響する可能性があります。そのため、紛争の初期段階で、関係資料の削除を停止し、適切な文書保全措置を講じることが重要です。
Q13 | 国際仲裁の内容は秘密にされますか?
国際仲裁の審理は、通常、裁判所の公開法廷のように一般には公開されません。そのため、取引条件、技術情報、営業秘密、企業間の紛争が外部に知られるリスクを抑えやすい手続です。
ただし、手続が非公開であることと、当事者に秘密保持義務があることは同じではありません。
当事者、代理人、証人、専門家などにどの範囲の秘密保持義務が課されるかは、仲裁規則、仲裁地の法律、仲裁廷の命令、当事者間の合意によって異なります。
重要な秘密情報を取り扱う場合には、仲裁条項、秘密保持契約又は仲裁開始後の手続命令において、情報を利用できる目的、閲覧できる者、提出方法、保存・廃棄方法などを定めることが重要です。
また、仲裁判断の取消しや強制執行のために裁判所の手続を利用する場合には、関係国の制度によって、紛争の一部が公開される可能性があります。
Q14 | 相手方による資産処分や証拠隠滅を、緊急に止めることはできますか?
状況に応じて、仲裁廷の暫定保全措置、緊急仲裁人手続、裁判所の仮差押え・仮処分を検討します。
仲裁廷は、資産や証拠の保全、現状の維持、一定の行為の停止などを命ずることがあります。
また、多くの仲裁規則には、通常の仲裁廷が成立する前に、緊急仲裁人へ暫定的な措置を申し立てる制度があります。ただし、利用できる条件や、緊急仲裁人の命令を各国で執行できるかどうかは、仲裁規則と関係国の法律によって異なります。
仲裁合意がある場合でも、裁判所に仮差押えや仮処分を申し立てることができる場合があります。特に、相手方に知られないまま迅速に資産を保全する必要がある場合や、第三者に対する強制力が必要な場合には、裁判所の手続が適していることがあります。
日本では、2024年4月1日に施行された改正仲裁法により、仲裁廷が発した一定の暫定保全措置命令について、裁判所の「執行等認可決定」を得た上で、強制執行等を行う制度が設けられました。
どの手段を選ぶかは、緊急性、資産や証拠の所在地、相手方への事前通知の要否、第三者の関与、実際の執行可能性を踏まえて判断します。
Q15 | 仲裁判断に不服がある場合や、相手方が支払わない場合にはどうなりますか?
仲裁判断に対して、裁判の控訴のように、事実認定や法律判断を全面的にやり直すことは、原則としてできません。
仲裁判断後に問題となる手続は、主に次の二つです。
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仲裁地の裁判所に、仲裁判断の取消しを申し立てる手続
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仲裁判断の承認・執行を求められた相手方が、執行国の裁判所において、その拒絶を求める手続
仲裁判断の取消し又は承認・執行の拒絶が認められるのは、仲裁合意が無効である場合、当事者に十分な防御の機会が与えられなかった場合、仲裁廷が権限を超えて判断した場合、公序に反する場合など、限定された場合です。
具体的な取消事由又は承認・執行拒絶事由は、仲裁地の法律、執行国の法律、ニューヨーク条約などによって異なります。
「承認」とは、仲裁判断の法的効力を認めることです。「執行」とは、その仲裁判断に基づき、相手方の預金、不動産その他の財産から強制的に回収することです。
相手方が任意に支払わない場合には、原則として、相手方の資産がある国の裁判所で承認・執行の手続を行います。
そのため、仲裁に勝つことだけでなく、相手方がどこに資産を持っているか、担保権や他の債権者が存在するか、資産が移転されるおそれがあるか、相手方に倒産のおそれがないかを、早い段階から検討することが重要です。
仲裁判断の取得から実際の回収までを一体として考え、必要に応じて複数国での資産調査、保全及び執行手続を検討します。
